最高裁判所第三小法廷 昭和34(あ)1303 決定
主 文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理 由
被告人本人の上告趣意第一点は事実誤認、第二点、第三点は訴訟法違反、第四点
(二)は事実誤認及び単なる法令違反、第五点は訴訟法違反を主張し、弁護人戸田
誠意の上告趣意第二点は量刑不当を主張するものであつて、いずれも刑訴四〇五条
の上告理由に当らない。
被告人本人の上告趣意第四点(一)及び右弁護人の上告趣意第一点について。
原判決の維持した第一審判決摘示の事実によれば、被告人は大阪刑務所看守Aが
その職務を執行するに当り、これに対して暴行傷害を加え因つて同看守の公務の執
行を妨害したものであり、被告人が妨害した同看守の公務の執行とは、その上司で
ある同刑務所第三区長Bの命令に基き受刑者たる被告人をその監房から右第三区長
室まで連行することであつた。(記録に依れば、B第三区長は監獄法施行規則一六
七条後段により同刑務所長代理として被告人に諭告をする意図をもつてA看守らに
被告人の連行を命じたのではあるが、下命に当つては右の意図を告げないで単に連
行を命令し、同看守らは右の意図を知らず単に上司の連行命令を執行するため被告
人を連行したに過ぎないことが認められる)。されば、A看守が上司であるB第三
区長の職務上の命令に基いて被告人を連行した行為は、前記施行規則により諭告を
するため受刑者を強制して連行することの適否如何にかかわりなく、同看守の職務
権限に属する事項であつて、適法な職務行為であるというべく、その執行に当りな
された本件妨害行為は公務執行妨害罪を構成すること明らかである。そして前記施
行規則の条項は典獄が受刑者を強制して諭告をなすべきことを規定しているわけで
はないから、該条項の憲法違反を主張する論旨は前提を欠き採るを得ず、その余の
- 1 -
違憲の主張はすべて結局実質において刑法九五条の解釈適用の誤りを主張するに帰
し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で
主文のとおり決定する。
昭和三四年一〇月三〇日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 河 村 又 介
裁判官 島 保
裁判官 垂 水 克 己
裁判官 高 橋 潔
裁判官 石 坂 修 一
- 2 -